コードの向こう側!ITエンジニアの具体的な時間の使い方と意外な日常を徹底解剖
「ITエンジニアって、ずっとパソコンに向かってコードを書いてるの?」
「朝から晩までどんな仕事をしてるんだろう?」
ITエンジニアという仕事について、漠然としたイメージはあっても、彼らが日々どんな時間を過ごし、どんな具体的な業務に携わっているのか、そのリアルな日常を知る機会は少ないかもしれません。これまでの記事でITエンジニアの職種や仕事内容の概要は解説しましたが、今回はさらに一歩踏み込み、「1日の流れ」という時間軸で彼らの具体的な業務を深掘りします。
IT転職アドバイザーとして、そしてプロブロガーとして数多くのエンジニアのキャリアと現場を見てきたマキマックスが、一般的なWebエンジニアの1日を例にとりながら、彼らがどのように時間を使い、どんなタスクをこなし、そしてどのような隠れた業務があるのかを詳細に解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたがITエンジニアとして働くイメージがより鮮明になり、「ああ、こんな風に1日を過ごすんだな」と納得できるはずです。さあ、ITエンジニアのリアルな日常を一緒に覗いてみましょう!
ITエンジニアの典型的な1日:Webエンジニア(自社開発企業)を例に
ここでは、ITエンジニアの中でも比較的求人が多く、多くの人がイメージしやすいWebエンジニア(自社開発企業勤務)の1日の流れを具体的に見ていきましょう。もちろん、企業やプロジェクト、個人の役割によって異なりますが、一般的なモデルケースとして参考にしてください。
【午前中】朝のスタートとチームの連携
- 9:00 出社/始業、メール・チャット確認 多くの自社開発企業では、比較的柔軟な勤務時間制度を設けているところも多いですが、一般的には9時〜10時頃に業務を開始します。出社したらまず、メールや社内チャットツール(Slack, Microsoft Teamsなど)で、前日の業務中に発生した緊急連絡や、今朝共有された情報、チームメンバーからの連絡などを確認します。
- 「あの機能の不具合が修正されたみたいだな」
- 「昨日のリリースで問題なかったかチェックしておこう」
- 「今日の朝会で話すネタを考えておくか」
- 9:30 朝会(スタンドアップミーティング) アジャイル開発を採用しているチームでは、毎朝短時間の朝会(スクラムでは「デイリースクラム」)を行います。これは、それぞれのメンバーが「昨日やったこと」「今日やること」「困っていること(課題)」を簡潔に共有する場です。一人あたりの持ち時間は短く、5〜15分程度で終わることがほとんどです。
- 目的は、チーム全体の進捗状況を把握し、課題があれば早期に発見して解決策を検討することです。ここで「Aさんがこの部分で困っているな。後で手伝おう」といった連携が生まれます。
- 10:00 午前の開発業務 朝会で共有された内容や、自身のタスクリスト(Jira, Trelloなどのタスク管理ツールで管理)に基づき、開発作業に取り掛かります。 例えば、担当している機能のプログラミングを進めたり、既存のコードに発生したバグの原因を特定して修正したり、新しい機能の実装に向けた設計書を読んだりします。 この時間は、集中してコードを書いたり、問題解決に取り組んだりする時間です。集中力を高めるために、ヘッドホンをしてBGMを聴くエンジニアも少なくありません。
- 「この処理、もっと効率的な書き方はないかな?」
- 「データベースの連携部分、設計書と合ってるか再確認しよう」
- 「あのエラー、まさかこんなところに原因が…!」
- 11:30 コードレビューの対応/実施 自分が書いたコードを他のチームメンバーにレビューしてもらったり、逆に他のメンバーのコードをレビューしたりする時間です。コードレビューは、品質向上、バグの早期発見、知識共有、チーム全体の技術力向上に不可欠なプロセスです。
- 「この変数名、もっと分かりやすい方がいいな」
- 「この処理、セキュリティ的に問題ないか確認しておこう」
- 「〇〇さんのコード、こういう書き方もあるんだな、勉強になる」 単に文法的な誤りだけでなく、設計思想や可読性、保守性、パフォーマンスなどもチェックします。
【午後】ランチタイムと多岐にわたる業務
- 12:30 ランチ休憩 チームメンバーと外食に出かけたり、社内カフェを利用したり、デスクで軽食をとったりと様々です。午後の業務に備えてリフレッシュする大切な時間です。
- 13:30 午後の開発業務 / ミーティング / 調査 午後の業務は、開発作業の続きが多いですが、必要に応じて様々なミーティングや調査業務も入ってきます。
- 技術的な調査・検証: 新しい技術を導入する際や、パフォーマンス課題を解決するために、様々な技術の調査やPoC(概念実証)を行うことがあります。
- 仕様検討ミーティング: 開発中の機能について、企画担当者やデザイナーと詳細な仕様を詰めたり、技術的な実現可能性を議論したりするミーティングに参加します。
- 進捗報告ミーティング: プロジェクト全体の進捗状況を、マネージャーや関係部署に報告するミーティングに参加することもあります。
- 16:00 テストの実施 / デバッグ作業 開発した機能が、設計書通りに動くか、想定される全てのパターンで問題なく動作するかをテストします。テスト中にバグが見つかれば、その原因を特定し、修正するデバッグ作業を行います。デバッグは、ITエンジニアの仕事の中でも特に粘り強さと集中力が求められる地道な作業です。
- 「まさかこんな入力でエラーになるなんて…」
- 「ログを追って原因を特定しよう」
- 「このバグ、過去にも似たようなのがあったな、履歴を確認してみよう」
- 17:30 ドキュメント作成/更新 開発した機能や修正内容について、他のエンジニアや将来の自分のために、技術仕様書、設計書、運用マニュアルなどのドキュメントを作成したり、既存のドキュメントを更新したりします。コードだけでなく、ドキュメントもシステムの重要な一部です。
- 「この機能、後から見た時に誰でも分かるように書いておこう」
- 「新しいAPIの仕様書をまとめておかないと」
【終業後】明日の準備と自己投資
- 18:00〜19:00 終業 / 退社 当日のタスクが完了したら、業務終了です。明日のタスクを確認し、PCをシャットダウンして帰宅します。もちろん、プロジェクトの状況によっては残業が必要になることもあります。
- アフターワーク:自己投資やリフレッシュ 終業後は、趣味やプライベートに時間を使うのはもちろん、ITエンジニアにとって重要な「自己投資」の時間でもあります。
- 技術学習: 新しい技術を学ぶためのオンライン講座受講、技術書の読書、個人開発など。
- 情報収集: 最新の技術トレンドに関する技術ブログの購読、ニュースサイトのチェックなど。
- コミュニティ活動: オンライン/オフラインの勉強会やミートアップへの参加。
ITエンジニアの1日は、単にコードを書くだけでなく、多様なミーティング、コミュニケーション、問題解決、学習、ドキュメント作成など、多岐にわたる業務で構成されていることが分かるでしょう。
ITエンジニアの仕事における「時間の使い方」と「意外な業務」
前述の1日の流れはあくまで一例ですが、ITエンジニアの仕事における時間の使い方には、いくつかの共通した傾向や、一般にはあまり知られていない「隠れた業務」があります。
コードを書く時間だけが「開発」ではない
ITエンジニア、特にプログラマーはひたすらコードを書いているイメージが強いかもしれません。しかし、実際にはコードを書いている時間と同じくらい、あるいはそれ以上に、以下の業務に時間を割いています。
- 考える時間:
- 「どう設計すれば最適なシステムになるか?」
- 「この問題をどう解決するか?」
- 「この機能はユーザーにとって本当に必要か?」
- プログラミングの前に、論理的な思考と計画に多くの時間を費やします。
- 調べる時間:
- エラーの原因究明、新しいライブラリやフレームワークの調査、競合サービスの分析など、ITエンジニアは常に「調べる」ことをしています。検索スキルはITエンジニアの必須スキルです。
- コミュニケーションの時間:
- チームメンバーとの連携、上司への報告、顧客との折衝、他部署との調整など、口頭やチャット、メールでのコミュニケーションは業務の大部分を占めます。
- テストの時間:
- 自分が書いたコードが意図通りに動くか、バグがないかを確認するテストは、非常に多くの時間を要します。自動テストの導入が進む企業もありますが、手動での確認も依然として重要です。
- デバッグの時間:
- テストで見つかったバグの原因を特定し、修正する作業です。時に数時間、数日かかることもあり、非常に地道で集中力を要します。
- ドキュメント作成の時間:
- 設計書、仕様書、テスト計画書、マニュアルなど、システムの「設計図」や「取扱説明書」となるドキュメントを作成・更新する時間も意外と多いです。
リモートワークとオフィスワークでの1日の違い
近年のIT業界では、リモートワークが普及し、多様な働き方が増えました。リモートワークとオフィスワークでは、1日の過ごし方も少し異なります。
- リモートワークの場合:
- メリット: 通勤時間がなくなり、その時間を自己学習やプライベートに充てられる、自分の集中できる環境で作業できる、場所にとらわれずに働ける。
- デメリット: コミュニケーションが希薄になりがち、オンオフの切り替えが難しい、運動不足になりやすい。
- 1日の特徴: コミュニケーションはチャットやWeb会議ツールが中心になります。意識的に休憩を取ったり、散歩に出かけたりと、自己管理能力がより求められます。
- オフィスワークの場合:
- メリット: チームメンバーと気軽に会話できる、偶発的なコミュニケーションからアイデアが生まれる、疑問点をすぐに質問できる。
- デメリット: 通勤時間がかかる、集中しにくい環境もある。
- 1日の特徴: 対面でのミーティングや雑談が多くなります。チームの一体感を醸成しやすいですが、集中できる時間を確保する工夫も必要です。
どちらの働き方にも一長一短があり、ご自身の性格やライフスタイルに合った働き方を選ぶことが重要です。
ITエンジニアの仕事のリアルな難しさと、それを乗り越える「時間の使い方」
ITエンジニアの仕事は、決して楽なことばかりではありません。具体的な業務の中で直面する難しさや課題を認識し、効果的な「時間の使い方」で乗り越えることが、充実したキャリアに繋がります。
1. 終わりの見えないデバッグとの戦い
「バグが見つかったけど、どこが原因か全く分からない…」これはITエンジニアが最も頭を悩ませる瞬間の1つです。デバッグは時に、数行の修正のために何時間、何日も費やすことがあります。
- リアルな難しさ:
- 原因不明のバグに直面した時の精神的消耗。
- 納期が迫る中でのデバッグは、大きなプレッシャーとなる。
- 地味で孤独な作業であると感じやすい。
- 賢い時間の使い方(対策):
- 再現手順の明確化: バグの再現手順を正確に把握することが、原因特定への第一歩です。
- ログを徹底的に追う: システムが出力するログメッセージは、デバッグの強力な手がかりです。ログの読み方を習得し、活用しましょう。
- 「助けを求める時間」を設ける: 何時間も解決できない場合は、潔くチームメンバーや先輩に相談する勇気を持ちましょう。一人で抱え込まず、効率的に解決することが重要です。
- 休憩とリフレッシュ: 煮詰まったら一度手を止め、休憩したり、散歩したりすることで、気分転換になり、意外なひらめきが得られることがあります。
2. 「仕様変更」と「手戻り」による時間のロス
開発を進めている途中で、顧客からの要望変更や、ビジネス状況の変化により、システムの仕様が変更されることは珍しくありません。これにより、すでに開発した部分を修正したり、作り直したりする「手戻り」が発生し、多大な時間のロスと精神的負担が生じます。
- リアルな難しさ:
- 積み上げてきた作業が無駄になる徒労感。
- 納期が厳しい中で、追加の作業が発生するプレッシャー。
- 顧客や関係部署との調整にかかるコミュニケーションコスト。
- 賢い時間の使い方(対策):
- アジャイル開発手法の導入: 短い開発サイクル(スプリント)で、こまめに顧客からのフィードバックを取り入れ、仕様変更に柔軟に対応できるアジャイル開発手法は有効です。
- 設計の柔軟性を意識する: 将来的な変更に強い、柔軟な設計を心がけましょう。
- 顧客との綿密なコミュニケーション: 要件定義の段階で顧客の真のニーズを深く掘り下げ、認識齟齬を最小限に抑えることが最も重要です。
- 影響範囲の明確化: 仕様変更が発生したら、その影響範囲を正確に見積もり、関係者に明確に伝えることで、スムーズな調整と手戻りの最小化を図れます。
3. 多様な関係者とのコミュニケーション時間と調整
前述の通り、ITエンジニアはコードを書くだけでなく、プロジェクトマネージャー、デザイナー、営業、顧客など、様々な立場の人々と密に連携します。彼らとの認識合わせや調整に多くの時間を要します。
- リアルな難しさ:
- 専門用語を使わず、相手に分かりやすく説明する難しさ。
- 異なる意見や優先順位を持つ人たちとの合意形成。
- 会議ばかりで、コードを書く時間が削られると感じることも。
- 賢い時間の使い方(対策):
- 会議の効率化: 目的を明確にし、事前にアジェンダを共有、時間厳守を徹底するなど、会議を効率的に進める工夫が必要です。
- 非同期コミュニケーションの活用: チャットツールやドキュメントツールを活用し、リアルタイムの会議を減らし、各自のペースで情報を確認・返答できる環境を整えましょう。
- 議事録の徹底: 会議で決まったこと、宿題などは必ず記録し、関係者に共有することで、後からの認識齟齬を防げます。
- ファシリテーションスキルの向上: 会議の進行役を務めるスキルや、議論を建設的にまとめる力を身につけると、コミュニケーションの質が高まります。
4. キャリアの方向性を見失わないための自己投資時間
ITエンジニアは常に学び続ける必要があるため、業務時間外の自己投資も重要です。しかし、これが強制的に感じられたり、方向性を見失ったりすると、疲弊してしまいます。
- リアルな難しさ:
- 仕事とプライベートのバランスが取りにくい。
- どの技術を学べば良いか迷い、学習が停滞する。
- 学習を続けるモチベーションを維持するのが難しい。
- 賢い時間の使い方(対策):
- 計画的な学習時間の確保: 毎日30分でも良いので、学習のための時間を「予約」しましょう。習慣化が最も重要です。
- 目的意識を持った学習: 自分が将来どんなエンジニアになりたいのか、どんなスキルを身につけたいのかを明確にし、それに合った学習を選びましょう。
- アウトプットによるモチベーション維持: 学んだことをブログに書いたり、小さな個人プロジェクトを公開したりすることで、達成感を得られ、学習のモチベーションを維持できます。
- IT転職アドバイザーとの定期的な面談: キャリアに迷ったり、スキルアップの方向性が見えなくなったりしたら、IT業界に詳しい転職アドバイザーに相談しましょう。客観的な視点からアドバイスが得られます。
ITエンジニアとして充実した1日を過ごすために
ITエンジニアの仕事のリアルな1日と、そこに潜む困難や注意点、そしてそれらを乗り越えるための具体的な時間の使い方について解説してきました。
決して楽な道ばかりではありませんが、ITエンジニアの仕事は、あなたの努力次第でいくらでも成長できる、非常にやりがいのある魅力的なキャリアです。
重要なのは、これらの「リアルな側面」を事前に理解し、自分にとっての最適な働き方を見つけるための工夫をすることです。日々の業務における時間の使い方を見直し、効率化を図り、そして自己投資を怠らないことが、ITエンジニアとして充実した1日を過ごし、長期的に活躍するための鍵となるでしょう。
